ソフトバンクグループによるABB(スイス)のロボット事業買収が、中国当局の不許可で頓挫した。買収額は54億ドル(約8550億円)。ABBは5日、中国の外国投資安全審査を担う機関が中国国内のABBロボティクス事業の買収を禁止したと発表した。孫正義会長兼社長が掲げる「フィジカルAI」戦略の柱とされた大型買収が、米中対立のあおりを受ける形となった。

中国が買収を禁止——5日にABBが発表
ABBは5日、中国の外国投資安全審査を担当する「外国投資安全審査工作メカニズム弁公室」が、ソフトバンクによる中国国内のABBロボティクス事業の買収を禁止したと発表した。ソフトバンクは中国国家発展改革委員会(NDRC)から通知を受け、ABBに伝えたという。買収は2025年10月に合意し、2026年半ばから後半の完了を目指していた。中国の競争当局による審査は2026年2月に通過していたが、その後の外国投資安全審査で壁に阻まれた。
なぜ不許可に?——AI学習へのデータ流出を懸念か
不許可の理由について、ABBとソフトバンクはいずれも公式に説明していない。英フィナンシャル・タイムズの報道によると、NDRCは中国国内でロボットが生み出すデータが海外に移転され、AIモデルの学習に使われることを懸念したという。ソフトバンクはOpenAIへの大口出資者でもあり、データがOpenAIのモデル学習に使われる可能性が指摘されている。
中国はABBロボットの最大市場——売上の約3割
中国はABBロボティクス事業にとって最大の単一市場で、売上高の約3割を占める。中国の顧客向けロボットの9割以上は中国国内で製造されている。ABBロボティクス事業の2024年の売上高は23億ドル、EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は3億1300万ドルで、中国・米国・スウェーデンの工場に約7000人の従業員を抱える。

中国事業の分離を検討——7日の報道、交渉は初期段階
買収の頓挫を受け、ソフトバンクとABBは中国事業を切り離し、別の所有者のもとに置く案を検討していると、ブルームバーグが7日に報じた。中国事業を分離できれば、残りの事業をソフトバンクに売却できる。ただし交渉は初期段階で、実現しない可能性もあり、両社はコメントを控えている。ほかの選択肢として、別の買い手への売却(20億〜30億ドル規模とされ、53億7500万ドルを大きく下回る)や、当初計画されていたロボット事業の分離・上場の再検討も浮上している。
まとめ
ソフトバンクのABBロボット買収は、中国当局の不許可により頓挫した。54億ドルの大型買収は「フィジカルAI」戦略の柱だっただけに、打撃は大きい。中国事業の分離という新たな案が浮上しているが、交渉の行方は不透明で、今後の動向が注目される。
関連記事
- JTのロシア資産、さらに3社が暫定管理下に——プーチン氏が追加命令、対象は計7社に 売上1割・利益4分の1の最重要市場
- アイリスオーヤマ、最大約770万人分の個人情報漏えいか——公式通販「アイリスプラザ」が不正アクセス被害
(出典:Forbes Japan、日経新聞、ブルームバーグ、スイスインフォの報道をもとに編集部が解説。出典リンク:Forbes Japan、日経新聞、ブルームバーグ、スイスインフォ)

