「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました」——テレビのテロップやスマートフォンの速報で、こんな文字を見たことはありませんか。聞き慣れない言葉に、不安を感じた方も多いはずです。この情報は、地震の「予知」ではありません。では、何のための情報で、発表されたら私たちはどう動けばいいのでしょうか。基本から整理します。
南海トラフ地震臨時情報とは
南海トラフ地震臨時情報は、南海トラフの想定震源域やその周辺で、ふだんとは異なる現象が観測されたときに気象庁が発表する情報です。2017年に運用が始まり、2019年からは人々が取るべき対応を分かりやすく示すため、「巨大地震警戒」「巨大地震注意」といったキーワードをつけて発表されるようになりました。
発表のきっかけは、マグニチュード6.8以上の地震が発生したり、プレートの境界面で「ゆっくりすべり」と呼ばれる通常とは異なる動きが観測されたりした場合です。まず「調査中」の情報が出され、専門家で構成される評価検討会での検討を経て、数時間後をめどに次のいずれかの情報が発表されます。
大切なのは、この情報が地震の発生を「予知」するものではないということです。あくまで「ふだんより巨大地震の発生可能性が相対的に高まっている」と評価された状態を知らせるもので、必ず巨大地震が起きるという意味ではありません。正しく怖がるための情報だと考えてください。
3つのキーワードの意味を理解しよう
巨大地震警戒
想定震源域内のプレート境界でマグニチュード8.0以上の地震が発生し、続けて巨大地震が起きることへの警戒が必要と評価された場合に発表されます。津波からの避難が間に合わないおそれのある地域では、事前の避難が呼びかけられます。対応の目安となる期間は、最初の地震発生から1週間です。
巨大地震注意
マグニチュード7.0以上8.0未満の地震が起きたり、通常とは異なるゆっくりすべりが観測されたりして、注意が必要と評価された場合に発表されます。避難までは求められませんが、日頃の備えを再確認し、必要に応じて自主的に避難することが求められます。こちらも目安は1週間です。2024年8月には、この「巨大地震注意」が初めて発表され、大きな話題になりました。
調査終了
評価の結果、警戒や注意の条件に当てはまらなかった場合に発表されます。「何もなかった」という意味ではなく、「現時点で特別な警戒は必要ない」と評価されたことを示すものです。ただし、日頃の備えを続けることに変わりはありません。
発表されたら、具体的にどう行動する?
まず確認したいのは、自分が住んでいる地域が対象かどうかです。気象庁の発表と合わせて、自治体からの情報を確認しましょう。
巨大地震警戒が出た場合、津波からの避難に時間がかかる地域にお住まいの方や、避難に支援が必要な方は、親戚や知人の家など津波の届かない場所への「事前避難」が呼びかけられます。自治体が指定する対象地域や避難の方法に従って行動してください。
巨大地震注意の場合は、避難は求められません。家具の固定や非常用持ち出し袋の中身、避難場所や避難経路、家族との連絡方法を改めて確認しましょう。「いつも通りの生活を続けながら、備えを一段引き上げる」というイメージです。
どちらの場合にも共通するのは、デマに惑わされないことです。SNSなどで流れる不確かな情報ではなく、気象庁や自治体の公式発表を確認する習慣をつけましょう。不安なときこそ、情報の出どころを確かめることが大切です。
日頃からやっておきたい備え
臨時情報が出てから慌てないために、ふだんの備えが何より重要です。まずは次の5つを見直してみてください。
- 家具の固定と、寝室の安全確保
- 水・食料・日用品の備蓄(最低3日分、できれば1週間分)
- 非常用持ち出し袋の用意と、定期的な中身の見直し
- 避難場所・避難経路の確認(家族で実際に歩いてみる)
- 家族との安否確認方法の取り決め(災害用伝言サービスなど)
よくある誤解と正しい理解
「臨時情報が出たら、必ず巨大地震が来る」——いいえ。発生の可能性が相対的に高まったという評価であり、確定した情報ではありません。
「調査終了だから、もう安心」——あくまで評価時点での判断です。日頃の備えを続けることに変わりはありません。
「自分の住む地域には関係ない」——対象は南海トラフ沿いの広い地域に及びます。旅行や出張で訪れる可能性もありますし、遠く離れた地域でも物流などへの影響が考えられます。
正しい知識は、不安を和らげ、いざというときの行動を早めます。この機会に、ご家族で一度話し合ってみてはいかがでしょうか。

