G20外相会合が閉幕、共同声明は見送り——クアッドはAI支援8500万ドル超で合意、ホルムズ海峡の航行の自由を強調

アトランタで開かれた外相会合のイメージ

米ジョージア州アトランタで開かれていた20カ国・地域(G20)の外相会合は10月31日、2日間の日程を終えて閉幕した。議長を務めた米国のルビオ国務長官は閉幕後の記者会見で、ホルムズ海峡や南シナ海、台湾海峡での「航行の自由」が脅かされているとの懸念を各国が共有したと総括した。一方、中東やウクライナを巡る対立が埋まらず、共同声明の取りまとめは見送られた。

共同声明見送りの背景

ホルムズ海峡を航行するタンカーのイメージ

ルビオ氏は会見で、中国やロシアを含む参加国の間で主要課題の合意が得られなかったことを認めた。産経新聞などによると「問題があることはみなが認めているが、解決策について合意を得るためには、やるべきことがまだある」と述べたという。

焦点となったのは、エネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の情勢だ。イランが同海峡を通過する船舶に攻撃を加えているとしてルビオ氏はイランを非難。紅海の要衝バブ・エル・マンデブ海峡周辺では、親イラン武装組織フーシ派が攻勢を強めている。

ルビオ氏は、レアアース(希土類)を含む重要鉱物のサプライチェーンや航行の自由は、エネルギーと食料の安全保障に直結する問題だと強調。各国とは認識を共有できたものの「解決策を模索するには多大な労力を要する」として、合意形成の難しさも率直に語った。

12月には米フロリダ州でG20首脳会合が開かれる。ロシアの侵攻を受けるウクライナのゼレンスキー大統領が参加する可能性について、ルビオ氏は「何か良いことが起こる可能性があるなら、出席すると思う」と述べるにとどめた。今回の外相会合にウクライナは招待されていなかった。

クアッド外相会合、AI支援8500万ドル超で合意

G20に合わせ、日米豪印4カ国の戦略対話「クアッド(QUAD)」の外相会合も31日に開かれた。茂木敏充外相、ルビオ米国務長官、インドのジャイシャンカル外相、オーストラリアのウォン外相が出席し、約40分間協議した。今年5月、7月に続いて今年3回目の会合となる。

会合後に公表した「経済的繁栄及び経済安全保障に関する日米豪印共同プレスリリース」では、インド太平洋地域で信頼性の高い人工知能(AI)の普及や技術革新を後押しするため、8500万ドル(約134億円)超を拠出する意向を表明。「日米豪印AI(SI)アクセラレータ」などを通じて支援する考えで、「パックス・シリカ」のような取り組みが将来の経済成長に重要だと位置づけた。

さらに、4か国の輸出信用機関が11月18日に東京で会合を開き、具体的な協力先を探ることも確認された。海洋・越境安全保障、経済的繁栄・経済安全保障、重要・新興技術、人道支援・緊急対応の4分野を協力の柱として改めて確認した。

中国の経済的威圧への「深刻な懸念」

共同プレスリリースは、中国による恣意的な輸出規制や過剰生産を念頭に、経済的威圧に対する「深刻な懸念」を表明した。中国がレアアースの輸出規制を強化するなか、サプライチェーンの安定確保はクアッド各国にとって最大の課題の一つとなっている。

中東情勢を巡っては、ホルムズ海峡、紅海、バブ・エル・マンデブ海峡における航行の自由を守ることの「絶対的な必要性」に触れ、国連海洋法条約に反映された国際法に沿って航行の権利と自由を守る方針を確認した。

なぜ注目すべきか

G20で共同声明すらまとめられなかったことは、分断が深まる国際社会の現実を映している。一方で、クアッドが具体的な資金支援と東京での実務会合まで打ち出したのは、G20の枠を超えた「有志国連合」による秩序づくりを加速させる動きだ。12月の首脳会合に向け、米中の対立が緩和するのか、対立が深まるのか。日本の外交のかじ取りが問われる局面が続く。

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