不正アクセスによる情報漏えいが相次ぐ中、政府は6日、サイバー攻撃対策のため、2026年度予算の予備費から100億円を支出することを閣議決定した。同日午後には関係閣僚会議を開き、被害企業に専門人材を派遣する「官民サイバー救援隊」の新設などを盛り込んだ緊急対策パッケージを決定した。相次ぐ情報漏えいの現状と、政府の対策の中身を解説する。

100億円の使い道——警察41億円・AI点検20億円・デジタル庁38億円
予備費100億円の内訳は、次の通りだ。警察のサイバーセキュリティー対策の機材整備に41億円を投じ、情報収集や分析、捜査や実態解明を進める。人工知能(AI)を活用して政府機関の重要システムの脆弱性を点検するために20億円を充てる。デジタル庁のシステムのセキュリティー強化には38億円を支出する。片山さつき財務相は6日の閣議後の記者会見で「関係省庁と連携し、セキュリティー対策に万全を期す」と述べた。
「官民サイバー救援隊」とは——被害企業に専門人材を派遣
対策パッケージの目玉の一つが、政府と民間の専門人材で構成する「官民サイバー救援隊」の創設だ。サイバー攻撃を受けた企業などのうち、特に必要性や緊急性が高い事案について、官民の専門人材が連携して被害の拡大防止や復旧を支援する。2026年度中の早い時期に事務局を設置し、派遣に向けた準備を進めることにしている。あわせて、被害のおそれがある組織に対し、不正アクセスの早期発見を促す「アウトリーチ・チーム」の設置も盛り込まれた。
ブロッキング検討も——「通信の秘密」との兼ね合いが課題
パッケージでは、通信事業者によるアクセス抑止策の早急な検討も明記された。漏えいした個人情報の悪用など、二次被害を防ぐため、サイトへの接続を強制的に遮断する「ブロッキング」が想定されている。ただ、ブロッキングは憲法が保障する「通信の秘密」を侵害するおそれが指摘されており、慎重な検討が求められる。政府はこのほか、システムの脆弱性を見つけるためにAIの活用を推進し、被害の恐れがある企業に事前の対策を促すことなども盛り込んだ。
なぜ今なのか——相次ぐ情報漏えい
政府が緊急対策に踏み切った背景には、このところ相次ぐ不正アクセスによる情報漏えいがある。企業のサーバーなどへの不正アクセスで、氏名や住所、クレジットカード番号などの個人情報が次々に流出し、利用者が行っていない金融取引などの被害も広がっている。ドコモでは通信障害とあわせて最大約30万件の情報流出が明らかになり、アイリスオーヤマでは最大約770万人分の個人情報漏えいの可能性が報じられ、無印良品の「MUJI Card」では約109万件のカード番号流出の可能性が公表された。日本郵便の国際配送サービスやSMBCグループでも情報漏えいが確認されている。対策パッケージでは、最近のサイバー攻撃について、すでに知られているシステムの脆弱性が放置されるなど、基本的な対策ができていないケースが目立つと指摘している。

高市首相「政府の総力を挙げて」
高市早苗首相は6日の関係閣僚会議で「今この瞬間にも不正アクセスや情報漏洩の事案が相次ぎ、国民生活や企業活動に大きな影響が生じています。政府の総力を挙げて我が国全体の対処能力を高めて参りましょう」と述べ、対策全体の実施に必要な財政措置についても、さらに検討するよう関係閣僚に指示した。政府は5日にも、事業者向けに脆弱性診断の継続など対策の徹底を要請していた。
私たちにできること——基本の対策を今一度
政府の対策と並行して、一人ひとりの基本的な対策も欠かせない。パスワードの使い回しを避け、重要なサービスでは二段階認証を使うこと、不審なメールやSMSのリンクを開かないこと、利用しているサービスの公式発表や注意喚起を確認することなどが挙げられる。情報漏えいが報じられたサービスを利用している場合は、公式の案内に従ってパスワードの変更や利用明細の確認を行うことが大切だ。
まとめ
政府は6日、相次ぐ不正アクセスへの緊急対策として、予備費から100億円の支出を閣議決定し、「官民サイバー救援隊」の新設やAIを活用した脆弱性点検、ブロッキングの検討などを盛り込んだ緊急対策パッケージを決定した。警察の機材整備に41億円、AIによる脆弱性点検に20億円、デジタル庁のシステム強化に38億円を充てる。被害の拡大を防ぐには、政府の対策とあわせて、企業と一人ひとりの基本的な対策の徹底が求められる。
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(出典:NHK、テレビ朝日、FNN、TBS NEWS DIGの報道をもとに編集部が解説。)

