「君が代は千代に八千代に」。日本の国歌「君が代」は、たった32文字からなる世界で最も短い国歌の一つであり、同時に世界で最も古い歌詞を持つ国歌としても知られています。その歌詞の起源は、1000年以上前の平安時代にさかのぼります。

1000年前の和歌が起源|古今和歌集の「読人知らず」
君が代の歌詞は、10世紀初頭の905年頃に編纂された『古今和歌集』に収録された和歌に由来します。巻七「賀歌」の巻頭にある「我が君は千代に八千代に細石の巌となりて苔の生すまで」という歌で、作者は「読人知らず」、つまり作者不明とされています。
名前も残さず消えた誰かの言葉が、1000年後の今も日本中で歌われている。そう考えると、胸に迫るものがあります。この歌はもともと、長寿や繁栄を祝う「賀歌」として、祝宴の席などで詠まれてきました。
歌詞の意味|戦いも血も出てこない祈りの歌
君が代の歌詞は次の通りです。「君が代は千代に八千代に細石の巌となりて苔の生すまで」。現代語に訳すと「あなたの御代が、千年も八千年も続きますように。小さな石が大きな岩となり、その岩に苔が生えるまで」という意味になります。
世界の国歌の多くが勇壮な戦いや独立を歌うのに対し、君が代には戦いも血も出てきません。ただ静かに、悠久の時の流れの中で平和が続くことを祈る歌です。小さな石(さざれ石)が年月をかけて大きな岩になる様子に、永遠の繁栄を重ねた日本人独特の感性が表れています。
なお、「君」が誰を指すかについては、天皇を指すという解釈が一般的ですが、時代によって様々な解釈がありました。

国歌になったのは明治時代|1880年の初演
君が代に現在の曲がつけられたのは1880年(明治13年)のことです。作曲は宮内省式部職の雅楽師・林廣守とされ、同年11月3日の天長節(明治天皇の誕生日)に宮中で初めて公に演奏されました。
その前年の1869年には、来日していたイギリス軍楽隊長が「日本には国歌がない」と指摘したことがきっかけで、国歌制定の動きが始まったとされます。最初の試みは薩摩琵琶の曲をつけたものでしたが、洋式の軍楽隊では演奏しにくく、現在の雅楽風の曲に作り直されました。
1999年に法律で正式化|国旗国歌法
長い間、君が代は事実上の国歌として歌われてきましたが、正式に国歌とする法律はありませんでした。1999年(平成11年)8月13日、「国旗及び国歌に関する法律」が成立・施行され、君が代が正式に日本の国歌と規定されました。日の丸が国旗と定められたのと同じ日です。
東京オリンピック2020の開会式ではMISIAさんが君が代を独唱し、その荘厳さが世界的に高く評価されました。イギリスのガーディアン紙も特別に取り上げ、歌の持つ優しさを称賛しました。

世界最古・最短の国歌|32文字の重さ
君が代の歌詞は、世界の国歌の中で最も古い歌詞とされています。905年頃の和歌が元になっているため、その歴史は1100年以上に及びます。同時に、32文字という歌詞の短さも世界一級です。
他国の国歌が明るい長調で勇壮に歌われるのに対し、君が代は静かで厳かな短調の曲調です。その独特の雰囲気は、海外の国歌研究者の間でも高く評価されてきました。
まとめ
1000年前の誰かの祈りが、32文字の歌となって今も歌い継がれている。それが君が代です。次に君が代を歌う機会があれば、その一文字一文字に込められた悠久の祈りを感じてみてください。

