書籍取次大手の日販グループホールディングスの子会社が、2024年12月から2025年12月にかけて日本の書籍をAI開発企業のAnthropicに大量に販売していたことが、米国の著作権訴訟の裁判資料から明らかになりました。Anthropicは生成AIの学習データを作るため、購入した書籍を大量にスキャンしていたとされています。

「AI学習目的とは認識していなかった」と日販
日販側は、AIの学習目的での購入とは認識していなかったと説明しています。しかし、取引の相手が生成AI開発の世界的企業であったことや、販売の規模から、出版社の間では「本当に知らなかったのか」と疑問の声も上がっています。
この問題を重く見た出版社の団体・日本書籍出版協会(書協)は日販に説明を求め、出版社側からは「許せない」といった強い反発の声が上がっています。書籍の流通を担う取次と、著作物の権利を持つ出版社との間で、深刻な信頼の問題に発展しつつあります。
法的にどうなるのか?専門家の見方
早稲田大学の上野達弘教授の見解として報じられているのは、書籍の「購入」そのものは著作権法30条の4(TDM=テキスト・データマイニングに関する例外規定)の範囲で適法となる可能性がある、という点です。つまり、買った本をAI学習のために解析すること自体が、ただちに違法とは限らないということです。
ただし同教授は、権利者の利益を不当に害する場合にはその限界があるとも指摘しています。法的に適法であっても、著作権者の意に反した形での利用が続けば、出版界全体の反発を招くことになります。

背景にある米国の訴訟と15億ドルの和解
今回の情報が明らかになった背景には、米国で起きているBartz対Anthropicの著作権訴訟があります。この訴訟では、正規に取得した書籍をAIの学習に使うことは「フェアユース」に当たると判断されました。一方で、海賊版の書籍約48万冊を保有していた問題をめぐっては、Anthropicが15億ドル(約2200億円)もの和解金を支払うことで合意しています。
日本でも、AI学習を目的とした著作物の利用について、権利者団体とAI開発企業との間のルールづくりが課題となっています。今回の件は、日本の出版界にとっても看過できない前例となるかもしれません。

AI時代の著作権ルールが問われる
生成AIの開発には膨大な学習データが必要で、書籍はその重要な供給源の一つです。しかし、著者や出版社にとって書籍は生活と文化の基盤であり、無断での利用が続けば創作活動そのものが損なわれかねません。
今後、日販の説明責任のあり方や、出版社とAI企業の間での対話、そして著作権法の解釈をめぐる議論がどう進むのか、注目されます。本を読む側としても、自分の愛読書がどのように扱われているのか、関心を持って見守りたいところです。続報が入り次第、お伝えします。

