JR宗谷線で特急がクマと衝突し脱線——乗客ら34人が車内で一夜、JR北海道で初めての「クマ脱線」事故

夜の北海道の原野に停車する特急列車のイラスト

2026年10月30日夜、北海道中川町のJR宗谷線で、特急列車がクマと衝突して脱線する事故があった。乗客と乗員34人は夜間のため車内で一夜を明かし、けが人は出なかった。JR北海道によると、クマとの衝突による脱線は同社で初めてで、国の運輸安全委員会が原因を調べる予定だという。

50メートル先のクマに非常ブレーキ、間に合わず

読売新聞などの報道によると、30日午後10時45分ごろ、宗谷線の天塩中川—問寒別間(中川町)で、旭川発稚内行きの特急「サロベツ3号」(4両編成)がクマと衝突した。運転士が約50メートル先にクマを見つけて非常ブレーキをかけたが間に合わず、先頭車両の車輪の一部がクマを巻き込んで脱線し、列車はその場で動けなくなった。

列車には乗客32人と乗員2人が乗っていたが、けが人や体調不良を訴える人はいなかった。衝突したクマは死に、現場に駆けつけたハンターによると、体重300キロほどの大きさだったという情報もある(※ハンターによる目算の情報であり、正式な確認ではない)。

「手負いのクマは一番危ない」——なぜ車内で一夜を明かしたのか

事故から約10時間にわたり、乗客らは列車内で待機を余儀なくされた。JR北海道の山北一郎運輸部長は31日の会見で「手負いのクマは一番危ないので、ハンターに同行いただかないと現地に行くのは非常に危険だと判断した」と説明。夜間は安全確認ができず、脱線した列車の状態も把握できなかったため、車内待機という判断になったという。

乗客の一人は「8時間くらい止まっちゃって結構長かったです」と振り返った。乗客らは一夜明けた31日午前9時半ごろから、タクシーによる代行輸送でそれぞれの目的地に向かった。

深刻化するクマ被害、鉄道にも及ぶ

近年、北海道や東北を中心にクマによる被害が相次いでいる。市街地への出没や人的被害の報道が増える中、今回は鉄道の脱線という新たな形で被害が起きた。動物との衝突自体はシカやイノシシなどで日常的に発生しているが、体重300キロ級のヒグマが車両の下に巻き込まれたことで、脱線という重大事故につながったとみられる。

雪原を走る線路と夜明けの山並みのイラスト

復旧の見通しは立たず、11月1日も運休・代行バス

宗谷線は音威子府—稚内間で11月1日まで運転を見合わせ、特急など15本が運休する。復旧の見通しは立っておらず、JR北海道は11月1日に旭川—稚内間でバスによる代行輸送を実施する予定だ。運輸安全委員会の調査と脱線車両の撤去が進められている。

ヒグマの活動が活発な秋、鉄道利用者にとっても他人事ではない事故だ。JR北海道の今後の対策と、国レベルのクマ対策の強化が問われている。

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