スペイン中部で10月28日に起きた高速列車同士の追突事故で、死者は69人に上りました。TBSの報道によると、負傷者はおよそ200人にのぼっています。現場はマドリードの南約100キロ、トレド県ウルダ付近の高速線。信号システムの障害で止まっていた列車に、運転再開を指示された後続の列車が追突しており、指令の判断が事故調査の焦点になっています。
事故は28日朝、止まっていた列車に追突
事故が起きたのは10月28日の朝、現地時間で午前8時53分ごろ(日本時間28日午後4時53分ごろ)でした。マドリードのアトーチャ駅を午前7時54分に出発した民間鉄道イリョの6076便が、ウルダ駅手前で止まっていたところ、同じ駅を後から出発した国営鉄道レンフェの高速列車AVE2080便が後ろから追突しました。
イリョの列車には約150人、レンフェの列車には397人が乗っていたと報じられています。追突の衝撃でイリョの後方の車両が脱線し、線路脇の斜面に落ちました。死者数は当初の発表から何度か修正され、10月31日までに69人となりました。司法当局によると、行方不明の届け出は72人分あり、このうち5人の生存が確認されています。

信号システム「LZB」の通信障害と運転再開の指示
事故の直前、列車を制御する信号システム「LZB」が通信障害で停止していました。報道によると、午前8時31分ごろ、約63キロの区間で6本ほどの列車が自動で停止。ところがその後、運行指令がレンフェの列車に通常どおりの走行再開を指示し、AVEは約25キロ走行して止まっていたイリョの列車に衝突したとみられています。
事故原因はまだ確定していませんが、捜査当局は指令センターから運行データを収集し、列車と交信した指令員を事情聴取するなど、原因の究明を進めています。スペインのプエンテ運輸相は10月30日、今年に入って鉄道の安全管理システムの障害が170件にのぼることを明らかにしました。現地メディアによると、事故現場周辺の区間では13件の障害が記録されていたと報じられています。
邦人2人は名簿に名前も連絡つかず
事故の乗客名簿には、日本人2人の名前があることが分かっています。日本の外務省は10月29日、スペイン当局から連絡を受けたと明らかにしました。2人は追突した側のレンフェの切符を購入していましたが、外務省によると、11月1日朝の時点でも2人とは連絡が取れていません。身元が分かっている犠牲者のリストに2人の名前はないものの、安否は引き続き確認中とされています。
外務省は現地対策本部を設置して対応に当たっています。2人の氏名や年齢、渡航の目的は公表されていません。
安全性への疑念、調査の行方が焦点に
スペインの高速鉄道でこれほど多くの犠牲者が出たのは、2013年に北西部ガリシア州で80人が死亡した脱線事故以来の規模です。TBSの報道では、事故に関わった作業員らが「事故は起こるべくして起きた」と語ったと伝えられており、スペインでは鉄道の安全管理体制に厳しい目が向けられています。
原因の究明には時間がかかるとみられますが、なぜ信号システムが止まり、なぜ停止中の列車の前へ走行再開が指示されたのか——指令の判断をめぐる調査結果が、今後の鉄道行政の方向性を左右することになりそうです。
(参考:TBS NEWS DIG、外務省、スペイン運輸省、現地メディア)

