2024年10月、衆院選の期間中に自民党本部と首相官邸が相次いで襲撃された事件で、殺人未遂罪や火炎瓶処罰法違反などに問われた臼田敦伸被告(51)の裁判員裁判の初公判が11月2日、東京地裁(江口和伸裁判長)で開かれた。被告は認否を示さず、法廷で異例の行動に出た。
初公判で起きたこと
裁判長から起訴内容の認否を問われた臼田被告は、突然立ち上がり、日の丸が描かれた紙を掲げて「国旗・国歌法に基づき作った日章旗です」と述べた後、その紙を破り捨てた。時事通信によると、紙を3度にわたって破り捨てるなどの行為もあったという。公判は一時中断し、再開後に弁護人は「公訴棄却を求める。事件について全て争う」と述べ、起訴内容を全面的に否認した。

事件の経緯
起訴状などによると、臼田被告は2024年10月19日早朝、東京都千代田区の自民党本部前の路上で、警戒中の警視庁機動隊員らにガソリン入りの火炎瓶5本を投げつけて殺害しようとしたとされる。その直後、軽乗用車で首相官邸前の防護柵に突入し、車に火炎瓶2本を投げて燃やすなどしたとされる。けが人はいなかった。刑事責任能力を調べる鑑定留置を経て、2025年2月に起訴された。
動機と背景
検察側は冒頭陳述で、被告が選挙の供託金制度や既存政党、警察組織に不満を抱き、2024年1月ごろから火炎瓶の製造方法を調べて材料を調達し、襲撃を決意したと指摘した。SNSには「機動隊は人民の敵」などと投稿していたという。
警察庁はこの事件を、組織に属さず単独でテロを実行する「ローンオフェンダー(LO)」によるものと認定。2022年7月の安倍晋三元首相銃撃事件、2023年4月の岸田文雄元首相襲撃事件に次ぐ、国内3例目のLO事件となる。

今後の公判日程
公判は初公判を含めて15回の期日が予定されている。今後、警察官ら約20人の証人尋問が行われ、11月30日に被告人質問、12月9日に判決が言い渡される見通しだ。なおこの日は、一般傍聴席20席に対し193枚の整理券が交付され、事件への高い関心をうかがわせた。
今後の注目点
被告は捜査段階から一貫して黙秘を続けてきたとされ、事件への思いを公にする初めての機会がこの初公判だったが、認否を明示しない異例の展開となった。今後の審理では、被告の刑事責任能力や犯行の計画性、そして「ローンオフェンダー」認定の根拠などが争点となりそうだ。判決は12月9日の予定で、裁判員がどのような判断を下すか注目される。

